コラム

2020.11.19

交通事故の過失割合「9対1」とは?納得できない場合の対処法

交通事故の被害に遭ったとき、自分には全く非がないと思っていたのに、相手方と自分の過失割合が9対1とされてしまうケースがあります。 このような場合は、「自分が被害者なのに、なぜ過失があると判断されたのか?納得できない!」と感じる方も多いのではないでしょうか。 そこで本記事では、事故の加害者だけでなく被害者にも過失があるケースについて解説します。 また、9対1という過失割合が変更できる可能性についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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交通事故の過失割合とは

まず、交通事故でよく聞く「過失割合」とは何でしょうか。

そもそも「過失」とは、不注意による失敗のことです。
交通事故においては、「本来ならば事故を予測できたのに、注意を怠ったために事故の発生を招いたこと」をいいます。

そして、事故の被害者と加害者の両方に過失があった場合に、お互いの過失がどのような比率だったかを表すのが過失割合です。
「事故の責任がすべて加害者にあるのではなく、被害者にも10%の過失があった」と認められた場合には、加害者と被害者の過失割合は90:10となります。

これが「過失割合が9対1」という状態です。

なぜ過失割合が9対1になるのか

被害者側に一切の落ち度がない、いわゆる「もらい事故」であれば、過失割合は10対0になります。
例えば、信号待ちの停車中に後ろから追突されるようなケースです。

しかし、「もらい事故」ではない場合の交通事故では被害者にも何らかの落ち度があったというケースが少なくありません。
左右の安全確認を怠った、よそ見をしていたなど、何らかの形で被害者側にも過失があった場合は、加害者と被害者の過失割合が10対0ではなく9対1や8対2になるのです。

損害賠償の金額が過失相殺で減ってしまう?

交通事故で被害に遭った場合、加害者に損害賠償の支払いを請求できます。

損害賠償には、事故で損傷した自動車の修理代や、ケガの治療費、精神的損害に対する慰謝料などが含まれます。
被害者に過失がなく、加害者と被害者の過失割合が100:0であれば、これらの損害は全額加害者に請求できます。
しかし、被害者にも10%の過失があったとみなされれば、この過失割合は90:10となり、損害の10%は被害者が負担しなければなりません。

このように、被害者側の過失の分を賠償額から差し引くことを過失相殺といいます。
過失割合が10対0になるか9対1になるかによって、加害者から受け取ることができる金額に差が出てくるのです。

過失割合の決め方

事故の当事者双方に過失がある場合、一般的にお互いの加入している自動車保険の保険会社を通して話し合いが行われ、その中で過失割合が決まります。
勘違いしている方もいらっしゃるかもしれませんが、警察は過失割合の決定には関与しません。

交通事故には膨大な事例があり、裁判によって示された判断が蓄積されています。
保険会社はそういった過去の裁判例を参考にして、類似した交通事故の事例から過失割合を決定しているのです。

基本過失割合が9対1になるケース

では、どのような場合に過失割合が9対1となるのでしょうか。
実際の過失割合は事故ごとの個別具体的な状況によって変わってきますが、以下では代表的な例の基本過失割合をご紹介します。

自動車同士の事故

異なった方向から進入してきた車両が交差する時に衝突する、いわゆる「出会い頭事故」の例。

自動車Aが優先道路を走行中、信号機のない交差点を直進しようとした際、別方向から交差点に進入してきた自動車Bと出合い頭に衝突した。
→過失割合 A 10: B 90

優先道路を通行しているAは、見通しのきかない交差点であっても徐行義務はないため、この事故ではBに大きな過失があります。
しかし、そんなAにも、交差点を通行するBに対する注意義務があるため、この事故ではAにも10%の過失があります。

自動車とバイクの事故

いわゆるドア開放事故の例。

バイクAが道路を走行中、道路左端に停車していた自動車Bの横を通行しようとしたところ、Bが突然ドアを開けたために、AがBのドアに衝突した。
→過失割合 A 10: B 90

駐停車中の自動車のドアを開ける際は、運転者は安全確認をしなければいけませんので、Bに大きな過失があります。
しかし、バイクAにも前方の確認義務があるため、Aの過失が10%となります。

自動車と歩行者の交通事故

駐車場内を歩行者Aが歩いていたところ、同じく駐車場内を走行していた自動車Bにはねられた。
→過失割合 A 10: B 90

自動車は駐車場内の歩行者の動きに注意し、すぐに停止できる速度で走行しなければいけませんので、Bに大きな過失があります。
しかし、駐車場内を四輪車が走行することは一般的なことであり、歩行者Aも自動車の動きに注意しなければいけませんので、Aにも10%の過失があります。

交通事故の損害賠償金額の計算方法

では、実際に過失割合が10:90と決定された場合、損害賠償額はどのように計算するのでしょうか。

総損害額を計算する

まず、被害者と加害者双方の損害額を計算します。

損害額に含まれるものには、まず車の修理代や医療費などの実際に支出が生じた「積極損害」と、事故によって本来得られるはずだった利益が失われた「消極損害」からなる「財産的損害」があります。
そして、精神的な苦痛や悲しみといった「精神的損害」も損害賠償の対象となります。
精神的損害をお金に換算して賠償してもらうのが慰謝料です。

これらをすべて合計した損害額を、事故の当事者双方について計算します。

ここでは仮に、先ほどの自動車同士の事故の例と同じく、信号のない交差点で優先道路を直進していた被害者Aと、出合い頭に追突してきた加害者Bの過失割合を10:90としましょう。
Aの損害額を1000万円とし、過失の大きいBにも200万円の損害が生じたものとします。

過失相殺による実際の負担額を計算する

AがBから受け取れるのは、損害額1000万円のうち、Aの過失である10%分を差し引いた金額です。

  • 1000万円 × (1 – 0.1) = 900万円

一方Bにも、Aに対して損害賠償を請求する権利があります。
ただしそれは、損害額100万円のうち、Bの過失である90%分を差し引いた金額となります。

  • 200万円 × (1 – 0.9) = 20万円

BがAに支払う金額が900万円、AがBに支払う金額が20万円です。
被害者であるAの損害額は1000万円でしたが、最終的に支払いを受けることができる金額は880万円となります。

交渉による過失割合の変更

保険会社によって提示された過失割合は、交渉によって変更できる可能性があります。

過失割合を9対1から9対0に

合計が100%になるのが割合の基本ですが、交渉によって「9対0」や「8対0」など、相手方の過失割合はそのままで、被害者側に過失がないとされるケースもあります。

交通事故の示談交渉は、事故の被害者本人が過失割合に同意しなければ決着しません。
同意に至らず交渉が長引いたときに妥協案として出されるのが、被害者の賠償義務を免除する、9対0や8対0といった過失割合です。
この方法を「片賠」といいます。

先ほどの事例と同じ損害額で、AとBの過失割合が0:90となった場合を考えてみましょう。
BがAに支払う金額が900万円であることは変わりませんが、Aの過失が0%になったことにより、AがBに支払う金額は0円となります。

結果、被害者であるAが支払いを受けることができる金額は、880万円から900万円に増えます。

過失割合を9対1から10対0に

保険会社によって9対1という過失割合が提示された事故で、交渉によって過失割合を10対0に変更することは困難ですが、被害者の主張が認められ、過失割合が10対0になることもありえます。
この場合、被害者Aの損害は全額認められるとともに、Bに損害賠償を支払う必要もないため、Aが受け取ることのできる金額は1000万円となります。

過失割合9対1の示談交渉の難しさ

以上のとおり、過失割合が9対1の場合は、交渉によって9対0や10対0に変更できる可能性もあります。
被害者側の過失割合が0になれば、加入している自動車保険によって相手方に損害賠償を支払う必要がなくなるため、保険等級が下がる(保険料が高くなる)ことを防ぐことができるという点もメリットです。

しかし、保険会社が提示してきた過失割合を交渉によって変更するには、事故の状況を詳細に検証し、法的な知識に基づいて具体的な根拠を主張する必要があり、個人で交渉するにはハードルが高いといえます。

そこで考えられるのが、弁護士に依頼するという方法です。
弁護士に代理人になってもらうことで、請求できる損害賠償の金額が大きく変わる可能性もあります。
交通事故の示談交渉で過失割合に不満がある場合は、交通事故に精通した弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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