コラム

もらい事故で適切な慰謝料を受け取るには?示談交渉の注意点

「もらい事故」とは、被害者に全く責任のない交通事故のことです。 典型的な例として、赤信号で停車中に後続車に追突されるようなケースをいいます。 いくら安全運転を心がけていても巻き込まれる可能性のあるもらい事故ですが、加害者に損害賠償を請求するうえで注意すべき点があることをご存じでしょうか? 今回は、もらい事故に遭った際に気を付けるべきポイントについて解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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もらい事故の特徴

まず、もらい事故と他の交通事故の違いについて見ていきましょう。

もらい事故の過失割合

事故における被害者と加害者の責任の割合を過失割合といいます。

交通事故においては、被害者側にも事故の原因となる過失があったというケースがあります。
例えば、被害者側にも事故の責任が20%あると認められた場合、被害者と加害者の過失割合は20:80となります。

この過失割合が0:100の事故、すなわち被害者側が一切悪くない事故を、一般的にもらい事故といいます。

もらい事故の示談交渉

もらい事故でも他の交通事故と同じく、被害者は加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求できます。
しかし、加害者から支払われる損害賠償の金額を決める示談交渉において、もらい事故特有の問題が出てきます。

加害者側は、示談交渉のプロである保険会社の担当者が加害者本人に代わって交渉の窓口となります。
ところが、被害者は自分の加入している保険会社に示談交渉をしてもらえないのです。

自動車同士の交通事故で、被害者・加害者の双方に過失がある場合は、お互いの加入する保険会社同士で交渉が行われるのが一般的です。
被害者に過失があったのであれば、被害者側の保険会社にも加害者に保険金を支払う義務が発生するといえますから、被害者側の保険会社は当事者として示談交渉に入ることができます。

これに対し、もらい事故では被害者の過失割合が0%なので、被害者が契約する保険には全く影響しません。
すなわち、被害者側の保険会社は事故に関して何の利害関係も持たないことになります。
このような金銭的な利害関係がない状態だと、保険会社が示談交渉を代行することは「弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事務を代理してはいけない」と定めた弁護士法72条に抵触してしまうのです。

したがって、もらい事故においては、事故と無関係である被害者側の保険会社は示談交渉に入ることができません。
被害者が補償を受けるためには、基本的に自分自身で相手方の保険会社と交渉することになります。

もらい事故で請求できる損害賠償

もらい事故で加害者に支払いを求めることができる損害賠償は、通常の交通事故と同様のものです。

積極損害

交通事故の損害のなかで、実際にお金を支出した損害のことを「積極損害」といいます。
転倒によってケガを負った場合の治療費や入院・通院にかかる費用はこの積極損害に該当します。

また、自動車が追突されたことによる修理費用など、物的損害についても損害賠償を請求することが可能です。
ただし、物的損害については購入額のすべてではなく、事故当時の時価で損害額が算定されることに注意しましょう。

消極損害

交通事故が原因で、本来得られるはずだった利益が得られなくなってしまったという損害が「消極損害」です。
ケガの治療中に仕事ができず、収入が減った場合の休業損害や、後遺障害が残ったことで将来に渡る収入が減少してしまった場合の逸失利益などがこれに該当します。

慰謝料

事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償のひとつです。
では、この慰謝料について詳しく見ていきましょう。

慰謝料の種類

まず、事故によりケガや治療の必要が生じた場合、通院や入院をすることになります。
この通院や入院による精神的損害に対する慰謝料が入通院慰謝料です。

また、交通事故では後遺症が残ることがあります。
申請により後遺症が後遺障害と認定された場合は、後遺障害慰謝料を請求することができます。

交通事故では被害者が死亡してしまった場合には、遺族に死亡慰謝料が支払われます。

慰謝料請求の際の3つの基準

交通事故の慰謝料を算出するための基準は3種類あり、どの基準を用いるかによって大きく金額が変わります。

・自賠責基準
車を運転する人なら必ず加入しなければならない「自賠責保険」で定められている基準が自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低い基準です。

・任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
おおむね自賠責基準よりは高額であるものの、弁護士基準と比較すると低額となります。

・弁護士基準
裁判基準とも呼ばれます。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、最も高額となる基準です。
弁護士に依頼して交渉してもらうことで、この弁護士基準によって算出した金額の慰謝料を請求することができます。

もらい事故に遭った際の対処

では、実際にもらい事故の被害に遭った場合、どのような対処をすればいいのでしょうか。

相手が100%悪いもらい事故ですが、やるべきことは基本的に通常の交通事故と同じです。
もらい事故だからといって、被害者が何もしなくてもいいというわけではありません。

警察に事故を報告する

まず、交通事故にあった場合、現場で二次災害が起こらないように安全な状態を確保したうえで、必ず警察に連絡するようにしましょう。
道路交通法では、事故が発生したときは直ちに警察に報告することを義務づけています。

また、事故を警察に届け出ないと、保険金請求に必要な「交通事故証明書」が発行されないという弊害も出てきます。
事故によるケガや痛みの治療費を加害者側に請求するためにも、人身事故として警察に届け出ることが重要です。

加害者の情報を取得する

加害者から取得すべき情報としては、以下の項目が挙げられます。

  • ・氏名および住所:運転免許証を提示してもらい確認する
  • ・自動車ナンバー:車両番号(ナンバープレート)は必ず控える
  • ・勤務先:相手に名刺などをもらう
  • ・電話番号:連絡のつく電話番号を確実に教えてもらう
  • ・保険情報:自賠責および任意保険会社の名称、保険番号を教えてもらう

※自動車の所有者や管理者が運転手(加害者)とは別の人の場合は、所有者または管理者の氏名・連絡先を別途聞き出しましょう。社用車などの場合は、車体に社名が記載されていることがありますので確認します。

今後のやり取りをスムーズに行うためにも、出来る限り多くの情報を取得するようにしてください。
許可を取ったうえで免許証などの写真を撮影させてもらうことができれば、間違いを防ぐうえでも有用です。
また、当て逃げの可能性もゼロではありませんので、状況によっては最初にナンバープレートを含めた加害者の自動車を撮影しておくのもおすすめです。

保険会社に連絡する

その後、事故があったことを保険会社に報告しましょう。

先に説明したとおり、もらい事故の場合は被害者側の保険会社に利害関係がないため、交渉の代理人になってはもらえません。
そのため、被害者の立場としては、自分が契約している保険会社に連絡する必要はないようにも思えます。

しかし、その事故が本当に過失割合0:100のもらい事故なのかどうかは、事故直後の時点で当事者に判別できるものではありません。
そのため、事故にあった場合は、すみやかに保険会社に連絡を入れておくようにしましょう。

警察の実況見分に協力する

人身事故として警察に届出をすると、刑事事件として警察による捜査が行われます。
そして、実況見分(いわゆる現場検証)が行われ、事故の状況を詳細に記載した「実況見分調書」が作成されます。
この中で当然被害者にも立合いが求められますが、警察からの要請には忙しくても必ず協力しましょう。

ドライブレコーダーなどの映像があればもらい事故であることを証明できますが、そうでなければ実況見分に基づく調書が事故の状況を証明する重要な資料となります。
実況見分調書は事故の過失割合を決める際の資料にもなりますので、警察からの協力依頼には速やかに応じ、事故の状況をはっきりと主張するようにしましょう。

軽傷だと思っても必ず病院を受診する

事故後は必ず、可能な限り早めに病院へ行き、適切な治療や検査を受けるようにしましょう。
事故直後は痛みを感じなかったり、軽傷だと思ったりしても、後から症状が悪化したり、重大な障害に発展するケースも考えられます。

また、事故から最初の通院までに一定の期間があいてしまうと、事故とケガとの関連性に疑問を持たれてしまい、治療費等の支払いを拒否される可能性もあります。
事故当日、もしくは翌日までには必ず受診しましょう。

もらい事故でいかに示談交渉を進めるか?

先に説明したとおり、もらい事故の示談交渉では「示談交渉のプロである加害者側の保険会社を相手に、いかに交渉を進めるか」という点が大きなポイントになります。
しかし、これは必ずしも「被害者が自分自身で示談交渉しなければならない」ということではありません。

弁護士に示談交渉を依頼する

示談交渉の相手となる加害者側の保険会社は交渉のプロですので、被害者にとって不利な内容で示談が進められる可能性もあります。
そこで考えられるのが、弁護士に依頼するという方法です。

もらい事故であっても弁護士に代理人になってもらうことは可能です。
交通事故に精通した弁護士に示談交渉を任せることができれば安心ですし、慰謝料の算定に弁護士基準を用いることで、請求できる損害賠償の金額が大きく変わる可能性もあります。

「弁護士費用特約」を活用する

弁護士に依頼するうえで心配なのが、弁護士費用の問題です。
弁護士の交渉によって高額の損害賠償を受け取ることができたとしても、弁護士に支払う費用の方が上回ってしまい、結果として損になる場合もあります(これを「費用倒れ」といいます)。

このような金銭的なマイナスを防ぐうえで、自動車保険の「弁護士費用特約」を活用するという方法があります。
これは任意保険の契約や更新の際に付帯できる特約のひとつで、多くの保険会社がオプションとして用意しています。

保険会社によって多少異なる場合がありますが、保険料に年間1,000円程度上乗せすることで、相談料が10万円まで、弁護士報酬や訴訟費用が最大300万円まで補償されますので、ほとんどのケースで弁護士費用をカバーすることができます。
弁護士費用特約を付けていることを忘れている場合もありますので、もらい事故に遭った際は、一度ご自身の自動車保険の契約内容を確認したうえ、弁護士への相談を検討されることをおすすめします。

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