コラム

2020.10.22

ぶつかっていない交通事故、「非接触事故」でも慰謝料は請求できる?

交通事故というと、多くの方が「接触事故」をイメージするのではないかと思います。 接触事故とは、自動車どうし、あるいは自動車と歩行者などが接触する(ぶつかる)交通事故のことです。 これに対し、接触を伴わない交通事故を「非接触事故」といいますが、ぶつかっていないのに「事故」とはどういうことなのでしょう? 今回は、非接触事故の概要や、トラブルになりやすい理由、そして加害者に請求できるお金などを分かりやすく解説します。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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非接触事故とは?

よくある接触事故は、「車と車が衝突する」、「車がガードレールに衝突する」、あるいは「車が人をはねる」といったものです。
これらの事故では現実に衝突が発生していますから、物が壊れたり、人がケガをしたりといった被害が生じます。

一方、非接触事故とは物理的な接触がない事故のことです。
誘因事故とも呼ばれます。
接触を避けるための急ハンドル・急ブレーキが非接触事故に繋がるケースが多く見られます。

非接触事故の被害に遭う例としては、以下のようなケースが挙げられます。

バイクで交差点を直進しようとしたところに、対向車が右折してきた。
「このまま直進すると衝突する!」と危険を感じ、思わず左にハンドルを切った。
その結果、対向車との衝突は回避できたものの、バイクは転倒し、ケガをしてしまった。

このケースにおいては、現実にバイク運転手のケガという人身傷害が発生していますが、その原因といえる対向車はなんら接触を起こしていません。
この場合、対向車の運転手に責任はあるのでしょうか?
また、バイクの運転手は対向車の運転手に対して慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

非接触事故で争点になりやすいポイント

非接触事故には、誰が加害者で誰が被害者なのかが分かりにくいという特徴があります。
では、具体的にどのような点が問題になるのでしょうか。

因果関係の立証

先に挙げた事例において、バイクが転倒する原因となったのは右折してきた対向車です。
しかし、当事者同士の接触がなく、加害者自身は誰かにぶつかったわけでも被害が発生したわけでもないため、加害者は「事故が発生した原因は自分にある」と簡単には認めない傾向があります。

被害者側の「予想外の動きをした対向車を避けようとして転倒した」という主張に対し、加害者側が「そちらの不注意で勝手に転んで事故になったのでしょう」と反論してくることも珍しくありません。

過失割合

加害者の行為と事故に因果関係が認められると、次は過失割合が問題になります。
過失割合とは、事故における加害者と被害者の責任の割合を言います。

交通事故は、「加害者に100%の責任があり、被害者は一切悪くない」という事例ばかりではなく、被害者側にも前方不注意や速度違反などの過失があったというケースも少なくありません。
そういった場合に、被害者側の過失の分を賠償額から差し引くことを過失相殺と言います。

接触事故でも非接触事故でも、過失割合は事故ごとに個別具体的に決められます。
そして、非接触事故の過失割合を決めるうえでは、加害者の進路妨害がどの程度だったか、被害者の事故回避行動が適切だったかという点が検討されることになります。

非接触事故で被害者になったときの対処方法

非接触事故_被害者_対処方法

では、もし実際に非接触事故に遭ってしまった場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
交通事故全般に言えることですが、特に非接触事故においては、事故直後の対応が非常に重要になります。

加害者の車や事故状況の確認

非接触事故では、加害者が事故に気付かずに(あるいは気付いていても)そのまま走り去ってしまう場合があります。
その場から走り去る車のナンバープレートを事故直後に確認することは難しいですが、可能な限りナンバーや車種などの特徴を確認しましょう。

現在はスマートフォンをお持ちの方も多いでしょうから、ナンバーを忘れないようにメモ機能や録音機能を使って記録しておくのもよいでしょう。

目撃者の確保

非接触事故のように、事故の因果関係を立証するのが難しい場合は、目撃者の証言がとても重要です。
もし事故を見ていた人がいれば、連絡先を教えてもらうなどしておきましょう。
被害者が確認できなかった加害者車両の特徴を見ている可能性もあります。

警察に事故の届出をする

非接触事故であっても、事故後は必ず警察に連絡しましょう。

例えば、バイクの運転中に非接触事故に遭って転倒した場合、誰も巻き込まなければ事故の被害者は自分一人だけです。
このような場合に、「自分一人が我慢すれば済むことだから」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、道路交通法では、事故が発生したときは直ちに警察に報告することを義務づけています。
また、事故を警察に届け出ないと、保険金請求に必要な「交通事故証明書」が発行されないという弊害も出てきます。
のちのちケガや痛みが発覚した場合に加害者に治療費を請求するためにも、人身事故として警察に届け出ることが重要です。

警察の実況見分に協力する

人身事故として警察に届出をすると、刑事事件として警察による捜査が行われます。
そして、実況見分(いわゆる現場検証)が行われ、事故の状況を詳細に記載した「実況見分調書」が作成されます。
この中で当然被害者にも立合いが求められますが、警察からの要請には忙しくても必ず協力しましょう。

ドライブレコーダーなどの映像があれば、加害者の進路妨害が原因で事故に遭ったことを証明できますが、そうでなければ実況見分に基づく調書が事故の状況を証明する重要な資料となります。
実況見分調書は事故の過失割合を決める際の資料にもなりますので、警察からの協力依頼には速やかに応じ、事故の状況をはっきりと主張するようにしましょう。

非接触事故で請求できる損害賠償

非接触事故であっても、相手に事故の原因があることを立証できれば、損害賠償の支払いを求めることができます。

積極損害

交通事故の損害のなかで、実際にお金を支出した損害のことを「積極損害」といいます。
転倒によってケガを負った場合の治療費や入院・通院にかかる費用はこの積極損害に該当します。

また、例えばバイクの運転中に事故で転倒した場合、バイクが破損すれば修理代がかかります。
加えて、車両以外でもヘルメットや衣服など、物的損害について損害賠償を請求することが可能です。
ただし、物的損害については購入額のすべてではなく、事故当時の時価で損害額が算定されることに注意しましょう。

消極損害

交通事故が原因で、本来得られるはずだった利益が得られなくなってしまったという損害が「消極損害」です。
ケガの治療中に仕事ができず、収入が減った場合の休業損害や、後遺障害が残ったことで将来に渡る収入が減少してしまった場合の逸失利益などがこれに該当します。

慰謝料

事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償のひとつです。

過失割合

これらの金額をすべて合計したものが損害額となりますが、ここで過失割合の問題が出てきます。
もしこの事故で、加害者と被害者の過失割合が80%対20%と判断された場合、損害額として算出した金額の80%を加害者に請求することができる、ということになります。

まとめ

非接触事故は、加害者側がどこにも衝突していないため、加害者側と被害者側とで責任の所在について揉めることが多くある交通事故です。
先に説明したとおり、加害者に損害賠償の支払いを請求するためには、加害者側に事故の原因があることを立証しなければなりません。

非接触事故にあった場合は、目撃者を確保することや、きちんと警察に人身事故を届け出て実況見分調書を作成してもらうことが重要です。
しかし、因果関係や過失割合において争いになるケースも多く、相手方に適切な賠償を求めるのは難易度が高いといえます。
非接触事故で被害に遭い、加害者に損害賠償の支払いを求める場合は、交通事故に精通した弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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