コラム

【事犯事例あり】交通死亡事故 – 被害者への賠償金と加害者が負う責任

交通事故によって、家族を亡くしてしまったら、自分が当事者になってしまったら、あなたはどうしますか?交通死亡事故は、被害者やその遺族だけでなく、加害者の人生も一瞬にして変えてしまうものです。 今回は、「被害者遺族がするべきこと」「被害者遺族が請求できる損害賠償金」「加害者がするべきこと」「加害者が負う責任と刑罰」など、事例を紹介しながら解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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交通死亡事故 – 被害者遺族がするべきこと

交通事故_死亡事故_被害者

交通事故により家族を亡くしてしまったら、あまりのショックで気が動転するのは当然でしょう。しかし、万が一の場合には、手続きなどしなければならないことがたくさんあります。

葬儀までの一般的な流れ

  • ・病院にてご遺体の確認が終わったら、葬儀場へ連絡し搬送します。
  • ・家族や親戚など近親者への連絡をする。
  • ・死亡届を役所に提出する(死亡の事実を知ってから7日以内)。
  • ・火葬許可証の申請を役所へ提出(葬儀を行う前までに)。
  • ・通夜、告別式

※実際には、死亡届の提出と火葬許可証の申請は同時に行うことが多いです。また、葬儀場が手続きを代行してくれる場合もあります。

保険金の請求に必要な書類を準備する

保険金を請求することは与えられた権利の1つです。家族を亡くした直後に、お金の話をする気にはなれないかもしれませんが、亡くなられた被害者のためにも権利を行使し、加害者への請求手続きの準備をすすめます。

今回は、自賠責保険で保険金請求をする際に必要な書類をご紹介します。

  • ・保険金支払請求書
  • ・交通事故証明書
  • ・事故発生状況報告書
  • ・死亡診断書診または死亡検案書
  • ・死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)
  • ・請求者の印鑑証明書
  • ・請求者の身分証明
  • ・(委任状)

保険金を請求できる遺族が複数いるケース

交通死亡事故の場合、保険金を請求できる遺族が複数いるケースが多くあります。そのようなときは、代表者を1名決め、請求権を持つほかの遺族は代表者に委任するのが一般的です。

加害者との示談交渉はいつ始まるのか

一般的な交通事故であれば、ケガの治療が落ち着いた頃や(後遺障害が残ったケースであれば)後遺障害等級が認定された後に示談交渉が始まります。

しかし、交通死亡事故の場合は、亡くなられた被害者の四十九日が終わると、相手方(加害者側)から示談交渉の連絡が入ることが多いようです。

示談成立と刑事裁判

交通死亡事故の場合、加害者は逮捕、起訴され、刑事裁判に発展するケースが多いです。

ここで、1つ注意したいことがあります。裁判が始まり判決までの間に示談が成立した場合、加害者の量刑が軽くなる可能性があります。
これは、示談成立により一定の弁済が終了しているため、被害者遺族も納得したと見なされるからです。遺族は裁判の行方を考えながら、慎重に示談交渉を進めるべきでしょう。

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交通死亡事故 – 被害者遺族が請求できる損害賠償金

交通事故_死亡_被害者_損害賠償

交通死亡事故の被害者遺族が、加害者に請求できる主なものは、「葬儀代」「逸失利益」「慰謝料」の3つです。
自賠責保険の場合、死亡事故によって生じた損害は、1人あたり最大3,000万円まで請求可能です。これは葬儀費、逸失利益、被害者および遺族への慰謝料の3つを合わせた限度額となります。

葬儀代

自賠責保険における葬儀費用の限度額は60万円です。
ただし、明らかに60万円以上かかったと証明できる資料(領収書など)があれば、100万円を超えない範囲で必要かつ妥当と認められる実費まで請求することができます。

しかし、弁護士基準(裁判基準)では、通常認められる限度額が150万円までとなります。過去の裁判では、それ以上の金額まで認められたものもありますので、交通死亡事故の場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

逸失利益

交通事故によって亡くならなければ、将来得られたであろう給料や収入などを逸失利益といいます。

<逸失利益の計算方法>

基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

生活費が控除されているのは、亡くなってしまったことにより、将来必要だったであろう生活費を、収入から差し引くという考えによるものです。

また、将来受け取るはずのお金を一括して受け取ることになるため、本来得られるはずだった期間までの利息を控除しなければいけません。ライプニッツ係数は、その控除する利息を算出するためのものです。

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、「亡くなられた被害者本人への慰謝料」と「被害者遺族への慰謝料」の2つに分けられます。

亡くなられた被害者本人への死亡慰謝料の相場は以下の表のとおりです。

亡くなられた被害者本人 自賠責基準 弁護士基準
一家の支柱※ 350万円 約2,700万円〜3,100万円
母親・配偶者 350万円 約2,400万円〜2,700万円
子供 350万円 約2,000万円〜2,500万円
高齢者 350万円 約2,000万円〜2,500万円
その他 350万円 約2,000万円〜2,500万円

※「一家の支柱」とは、亡くなった被害者の収入で生計を立てている場合を意味します。

交通死亡事故のほとんどのケースでは、弁護士に委任することが一般的なため、保険会社ごとに設定される任意保険基準は割愛しています。
また、被害者遺族へ支払われる慰謝料には一定の基準や相場は存在せず、その家庭ごとの様々な事情を考慮して決められるためケースにより異なります。

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交通死亡事故 – 加害者がするべきこと

交通事故_死亡事故_加害者

交通事故現場からは「絶対に」逃げない

万が一にも、交通死亡事故の加害者になってしまったとき、加害者には被害者を救護する義務があります。これは、道路交通法に規定されており、もし怠った場合は「ひき逃げ(不救護・不申告)」と見なされ、法令違反となります。

刑事裁判になった場合にも、現場での行動がのちのち自分への評価に影響しますので、絶対に逃げてはいけません。

落ち着いて、次の対応(行動)をするようにしてください。

  • ・被害者の安全を確保し、119番通報し救急車を呼ぶ
  • ・車両を移動させ、二次被害が起きないように後続車などに知らせる
  • ・110番通報し、警察に連絡する

被害者遺族への心からお詫び

万が一、交通死亡事故を起こしてしまった場合、被害者遺族へのどれだけ真剣に謝罪の気持ちを伝えようとしたかどうかは、刑事裁判になったときにも影響します。

被害者遺族から拒否されない限りは、真摯に謝罪の意思があることを伝えるべきです。

交通死亡事故 – 加害者が負う責任

交通事故_死亡_加害者_懲役

民事責任

交通事故が原因で相手に損害が発生した場合は、過失割合に応じた賠償をする責任があります。賠償には人身損害と物的損害の両方が民事責任に含まれます。

刑事責任

加害者の過失が全くのゼロでない限り、過失運転致死傷罪が成立し刑事責任を負う可能性が高くなります。罪を犯したとして認められる場合には起訴され、その判決により罰金や懲役などの刑罰が科されます。

行政責任

運転免許証の停止処分や取消処分などの行政上の責任を負うことも考えられます。

死亡原因によって変わる加害者の刑罰の重さ

刑罰の重さは、その死亡させるに至った原因によって異なります。

危険運転致死

正常な運転ができない危険な状態で運転をして、死亡させてしまった場合です。

自動車運転死傷行為処罰法では、以下のとおり規定されています。

  • ・2条に規定の危険運転致死罪・・・1年以上20年以下の懲役
    アルコールや薬物の影響で、正常な運転が困難な状態であった場合、速度超過、あおり運転など
  • ・3条に規定の危険運転致死罪・・・1か月以上15年以下の懲役
    アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがあった場合、てんかんや低血糖症などの影響で正常な運転に支障が生じるおそれがあった場合

過失運転致死

運転中に注意を怠り、死亡させてしまった場合です。
7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます。

事犯事例1 – 危険運転致死傷

■罪名

  • 危険運転致死傷
  • 道路交通法違反
  • 窃盗

■概要

  • ①無免許運転
  • ②飲酒後、酒に酔った状態で車を運転したため、正常な運転ができず、前方左側を歩行中の歩行者8名を時速約70kmで次々とはねた。
  • ③不救護・不申告
  • ④窃盗
  • ⑤①・②とは別の機会の無免許運転

■死傷者

  • 死者4名
  • 負傷者4名

■判決

  • 懲役20年

■刊行物

  • 判例タイムズ1214号315頁

<参考>法務省ホームページ 危険運転致死傷の事例(アルコールの影響)
http://www.moj.go.jp/content/000104675.pdf

事犯事例2 – 自動車運転過失致死傷

■罪名

  • 自動車運転過失致死
  • 道路交通法違反(酒気帯び)

■概要

  • ①酒気帯び運転
  • ②酒気帯びの状態で車を運転させ、制限速度を40km/hオーバーかつ、赤信号無視で交差点に進入し、青信号に従って、左から進行してきた被害車に自車を衝突させた。

■死傷者

  • 死者2名

■判決(処断刑の上限)

  • 懲役8年(懲役10年)

事犯事例3 – 自動車運転過失致死傷

■判決

  • 自動車運転過失致死傷
  • 道路交通法違反(酒気帯び、不救護・不申告)

■概要

  • ①酒気帯び運転
  • ②酒気帯びの状態で車を運転させ、制限速度を50km/h以上超過して対向車線にはみ出し、対向車線から向かってきた車を避けるために左ハンドルを切ったところ、左を走行していた被害者車Aに衝突し、その反動で、対向車線の被害者Bにも衝突した。
  • ③不救護・不申告

■死傷者

  • 死者3名
  • 負傷者1名

■判決(処断刑の上限)

  • 懲役7年(懲役15年)

<参考>法務省ホームページ 道路交通法違反を伴った自動車運転過失致死傷事犯
http://www.moj.go.jp/content/000104674.pdf

交通事故_死亡事故_オーセンス

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